地球温暖化による北極海の海氷減少に伴い、海を泳いでの長距離移動を余儀なくされた
ホッキョクグマの子どもは、そうでない子グマよりも死亡率が高いことが分かった。
これまでの調査では、ホッキョクグマは氷の上や地面に到達するために
数百キロにわたって海を泳いで移動することが分かっているものの、
海中での長距離移動が子グマに与える悪影響について調べたのは今回が初めてとなる。
ホッキョクグマは氷上で狩りや繁殖を行うものの、
もともと水中で長時間過ごすことに適した生物ではなく、
調査の共同執筆者である世界自然保護基金(WWF)のジェフ・ヨーク氏は、
「温暖化により海氷が溶けたことで、
一部のホッキョクグマは食料や住みかを求めてより長い距離を泳がされている」と指摘する。
調査では、ホッキョクグマのメス68頭に全地球測位システム
(GPS)を搭載した首輪を装着し、2004年から6年間にわたって行動を追跡。
その結果、1回の移動で48.28キロ以上を泳ぐこともあることがわかった。
6年間での長距離移動は50回を数え、移動距離は最長で685.6キロ、
移動期間も最長で12.7日間に達した。
この首輪を装着した当時、子グマを連れたホッキョクグマは11頭。
このうち5頭は子グマを失っており、死亡率は45%になる。
一方、長距離を泳ぐ必要のなかった子グマの死亡率は18%だった。
ヨーク氏は電話インタビューで、
「(ホッキョクグマは)われわれ人間と非常に似ている」とコメント。
「波の荒い海では鼻孔をふさぐことができず、
年老いたクマや子グマは嵐に遭遇した場合に命の危険にさらされる」と述べた。
米地質調査所(USGS)の元科学者で、
現在は環境保全団体ポーラー・ベアーズ・インターナショナルの
主任科学者を務めるスティーブ・アムストラップ氏は、
子グマにとって北極圏の海を泳ぐことは2つの点で困難だと指摘。
子グマは十分な脂肪を体内に蓄えておらず、長期間にわたって極寒の海を泳ぐことができない、
体が小さいため浮力も小さく、
波の荒い状況では頭部を海面より上に保つことが難しいと説明している。